「俺、マジでそっちのケないから。それだけは言っとくから。」
これは、ゲイであることをノンケにカミングアウトしたときの返答の一つである。
実際にこのように返答を受けた人たちは、現在では少ないかもしれない。
・メディアでLGBTQの露出が増え、またセクシャルマイノリティをネタとしてイジる時代ではなくなったこと
・学校教育として早い段階から個性を尊重する考え方を伝えていること
この2つは完全ではないにしろ、セクマイへのある種の寛容さを助長したと思う。
(寛容さなどと言うと過激派の人からは、「なぜ相手の立場が上としてあたかも許すかのような表現をするんだ」と言われそうだが、これはあくまでも個人としての意見で、また当事者の意見でもあるので、そこの正確な表現とか云々は面倒なので突っ込まないでほしい・・・。)
最初の言葉に戻るけども、
「俺、マジでそっちのケないから。それだけは言っとくから。」
と言われた瞬間、自分だったら
『言わんときゃよかった。』
『大切なことは今後、こいつには相談せんとこ』と思う。
実際に言われたわけではないので、想像の域は超えないが。
自分自身の体験をひとつ。
現在、自分は上京して東京で働いている。
と、いう事はもともと地方出身者という事だ。
大学で上京するまで、小学生から高校生、また大学になってからも付き合いのある仲良し4人組の一人だった。
高校は4人それぞれが違う場所に進学したけど、それでも月に1度は地元のフリータイム500円ポッキリ(持ち込み自由)のカラオケで歌って騒ぐくらい仲が良かった。
高校生という多感な時期でそれぞれの高校であった恋愛話にもなる。
一人は工業高校で共学ではあるが女子は学年で、数名程。そうなると恋愛という感じではなく出会いもないと言う。
もう2人は同じ高校で進学校で男女比率は約5:5でそれぞれに彼女もいた。
かくいう自分はと言うと、その時は絶賛、片思い中だった。
ラグビー部の【男の子】に。
ゲイによくあるスポーツマンが好きという傾向に違わず、自分もスポーツマンに絶賛、恋をしていた。
見た目もさることながら、優しい。運動神経バツグンなのに授業でやるラグビーの授業では下手な奴にも優しい。不意にハグしてくる。
(やめてくれ~~~こういうところがずるいんよな!恋愛感情ないくせに無駄にスキンシップとってくんなよ!好きになっちまうやろ!)
と日々、悶々をしておりました(笑)
幼馴染の4人との話の中で、「ずーやまは付き合っとらんの?」と聞かれ、この3人には嘘をつきたくない。でも、本当の事は言えない。と思い
「あ~なんとなく気になる人はおるけど、彼女はおらんよ」と答えていた。
自分で言うのもなんだが、高校の頃は割とモテた。
クラスで一番かわいいと言われていた女の子に1年目が終わるころ「実はずーやまくんのこと好きだったんよ」と謎の告白を受けたこともある。
(今は好きじゃないならなぜ伝える必要があるんだ・・・と女心を理解できず、なんかすごく失礼に「あ・・・はあ・・。そうやったんや」と情けない返答をした気がする。)
そんなこんなで、まあ見た目的には頑張って高校デビューしたこともあり、周りが彼女を続々作る中で、「お前にいないのはおかしい」と言われ続けた。
そのたびに「あーなんか付き合うと面倒じゃん?女ってかまってあげないとさ~おれ、メールの返信とか遅いし、だるいんよね。」とかったるい男子を演じていた。
月日が経って大学生になっても4人の関係は続き、ある夏、俺は帰省をした。
大学に入ってから、様々なゲイの仲間に出会い、これまでは「絶対にゲイだとばれたくない」と思っていた心情にも変化が起きていた。
「ゲイである事は恥ずかしいことじゃないし、自分の事をより分かってほしい人には本当の自分をもっと知ってほしい」
という気持ちにもなっていた。
この気持ちはある意味で傲慢でもある事は今の自分ならわかるし、正解もわからない。
ただその時は大好きな友達に嘘をつき続ける事が苦しくなっていたのだと思う。
俺を除く3人の中でも、一番の信頼を寄せているH田のみにカミングアウトをしようと決意した。
4人で地元の居酒屋に集まり、小学生の頃にあほだった自分たちの話にバカ笑いし、涙が出るほど笑って、そこからゲームセンターに行ってプリクラを撮って、ボーリングをすると、時間はもう日を跨いでいた。
そろそろお開きだねとなり、ハンドルキーパーのH田が友達2人の家に行って、降ろしていく。最後H田と俺の二人きりになり、思わず俺は「ごめん、夜遅いけどさ、話したことあるんよ。マックがどっかいってくれん?」と勇気を振り絞った。